アクティブでいること 〜ものづくり・ひとづくり・まちづくりの連鎖〜
新しい年を迎え、お慶びを申し上げます。最後の論壇となり、年始ということもあって今後の活動について抱負を述べさせていただきます。第1回目の論壇でも触れましたが、建築分野以外に大きく二つの活動が同時に進行中で、いずれも企画プロデュースという立場で参加しています。まず一つ目は「KAMI GAKARI展」というファインペーパー(デザイン紙)を使い、様々なクリエイティブな分野で活躍しているデザイナー、クリエイターと共に作品を制作展示するペーパーショウの新しい展開を模索しています
この企画展は今年で3回目を迎え、延べ50人以上のデザイナーと紙という媒体を通してデザインの可能性を試みてきました。一昨年の第1回目は「紙の新しいカタチを求めて」をテーマに15人の作家が参加して紙の可能性を探るものでした。一口に紙と言っても千種類以上あり、表面テクスチャーはフワフワ、つるつる、ガサガサ様々で本皮と見間違えるものもあります。服飾デザイナーによる紙のウエディングドレスは、紙と布の境界線を越え見るもの全てを圧倒した作品に仕上がりましたし、紙を染色の素材として独特のニジミによるタペストリーやテーブルクロスも紙素材でしか味わえない質感が来場者の共感を得ていたと思います。開催した県立美術館の県民ギャラリーには連日1,000人を超え、9日間で9,000人の来場者があり、企画展の新しい切り口に県民の関心の高さが伺えました
昨年の第2回目は「パッケージ」をテーマに〝大切なものを包み込む〟といった思いを表現したものとなりました。そして、もう一つの大きな意義は県産品として商品開発に情熱を注いでいる県内企業の商品パッケージを現実に制作することでリアリティーを持たせ、また、企業ごと包み込むことでブランディング化を表現できればと思ったわけです。そこで、最も重要なことは「デザインの決定権はデザイナーにある」ことを明確にしたことです。企業側、作家側がお互いの立場を明確にすることで、この企画展の開催意義と企業・作家のマッチングが同時に成立しました。各企業は県内で活躍する優れたデザイナーが多くいることを認識し、自己PRの苦手な作家側は表現の伝達手段を得たことになり、現に展示会終了後にビジネス協議に入った企業もありました。想定外に関心を示したのが、新たなビジネスチャンスと捉えた印刷業界と本物のデザインに飢えていた学生です。県内ではこのような企画展がほとんどなく、おそらく学生はネットや写真でみるしかなかったのでしょう。今年2012年2月7日〜12日に第3回目となる「紙語(かみがたり)展」が開催されます。「ことばのかたち」「紙遊び」「パケージ」をテーマにこれまでの集大成となることをご期待ください
二つ目は、昨年の12月に与那原町旧商店街のえびす通りで催した朝市で、町道に約 20台の軽トラックを連ね即売するもので、定期市として2ヶ月に一度商工会が中心となって開催していきます。
与那原は歴史的遺産があるわけでもなく、農産物の有名な産地でもありません。戦前はやんばる船の寄港地として、多くの物や人が交流し商業により栄えた地域であり、まちづくりの糸口をこの点に着目したわけです。与那原大綱曳の「綱」と車が連ねる様子を列車に見立て、戦前与那原〜那覇間を結んでいた軽便鉄道から軽トラ朝市の名称を「綱がる軽便市」としました。一般的に公道では物を売ってはならないという警察の規則がありますが、寂しくなった旧商店街を昔のように人で溢れさせたいという思いで、何度となく協議を重ね実現しました。恐らく沖縄初の試みではないでしょうか。農家直売の新鮮な農作物、手作り豆腐、県産豚加工品、花木苗木、水産加工品などを荷台いっぱいに積み連ね、昔ながらの相対売りの風景は情緒的で、4時間で約500人余の買い物客で賑わいをみせ、通常の3倍の売上げを計上した店舗もありました。
元気のなくなった商店街が賑わいを取り戻すために、人と人との繋がりにより再び見いだせればと思っています。商店街に活気が戻れば、ストリートアートや空店舗を活用したアンテナショップ、展示ギャラリーなど今後の展開も見えてきます。
この事業の発端は二年前、えびす通り商店街活性化を目的に「ふるさと雇用再生特別基金」を使ったセレクトショップを開店したことから始まります。前述した企画展で知り合えたクリエイターの作品を販売する雑貨店です。私の中ではこの二つの活動は繋がっていますし、ものづくり、人づくり、人の繋がりによるまちづくりという意味においては、まさに建築と繋がっていきます。今年もまた新しい繋がりが起こり、新たな活動が始まることを期待しています。